穴ぼこ生活

穴ぼこの空いた数だけ書き記すお気楽ブログ。穴ぼこ人生ここに極まリ!

忌まわしい記憶

www.ei-publishing.co.jp

いわゆるヤンエグ層に向けたライフスタイルや趣味を取り上げた雑誌を数多く出版していた「エイ出版」が倒産(民事再生)したとのこと。
たしか編集部が世田谷区の用賀にあるはずなんけど、東急田園都市沿線に特化した刊行物が多く、沿線のイメージアップに一役買っていた出版社だったように思う。
ちなみに都内に詳しい人なら分かると思うけど、田園都市線と並行するように小田急線も都心から郊外を結ぶ路線となっているのだけど、両電車のイメージはまるで好対照なんだよね。
そんでもって、穴ぼこオヤジは10代の頃から小田急沿線住まいだったので、庶民派の小田急沿線とは異なる、垢抜けた雰囲気の田園都市沿線を嫉妬混じりの冷ややかな眼差しで眺めながら育ってきたのだった。
ところで、町田の七不思議のひとつに、小田急のお膝元の町田になぜだか東急のデパートがあるのだけど、一説によると終点を町田に予定していた田園都市線の路線計画がとん挫してしまったからなんて噂もあったり。

そんな訳で、エイ出版から出ている雑誌は小田急沿線の養分で育った人間からすると、おいそれと手に取る訳にはいかないプライドが働くのだけど、あろうことか町田本だったり、ロードバイクやトレッキング関連といった穴ぼこオヤジ心をくすぐるような出版物も数多く出していたりするので、不本意ながら我が家の本棚にはエイ出版関連コーナーが出来そうなぐらいになっていることを、この場で白状しておく。
ただし、そのほとんどはブックオフで手に入れた物で、せめてもの小田急線魂を示してはいるつもりなんだけどね。

町田本 最新版 (エイムック 3732)

で、ここからが本題。
今から10数年前、穴ぼこオヤジがそれまで働いていた音楽業界に見切りをつけて再就職を目指していた時のこと。
それまで、いくつかの某有名企業で音楽制作やレーベル事業に関わりながら働いていたのだけど、その間、保身に走る上司の裏切りにあったり、経営陣が頃々変わってその度に180度仕事の評価が変わったり、良かれと思って率先して泥仕事をしていたら自分が泥扱いされるようになっちゃったり、でもってその間に音楽不況の風も吹き荒れだし、自分の名刺の肩書も目まぐるしく変わり、ついには片道1時間半以上掛かる倉庫の一角のオフィスに追いやられ、最終的には自分が関わった事業の縮小を受けて無関係の部署に飛ばされそうになったところで、もはや限界に達して会社を辞めることになったんだよね。

で、ここで悪い流れが止まれば良かったんだけど、目処を立てていた次の就職先の話がおじゃんとなり、それでもなんとか頑張って、とあるレコード会社の役員面接まで辿り着けたこともあったのだけど、あえなく不採用となり、そうこうしている間に、いきなりリーマンショックによる突然の大不況。
いやほんと、坂道を転がり落ちていくようだった。

で、そこからは人生2度目の引きこもり生活に突入するのだけど、さすがに何かしら稼がなきゃいけないってことで、辛うじて残っている気力を振り絞りながら、なんとか務まりそうな仕事を探していた時に穴ぼこオヤジの目に留まったのが、件のエイ出版の募集だったんだよね。

ただし募集は雑誌の編集とかではなく、ゴルフ事業での募集。
というのも、当時、エイ出版では出版事業以外にも、飲食店などいくつかの他事業も展開をしていて、元々「EVEN」というファッション系のゴルフ雑誌も刊行していたことから、二子玉川に工房やゴルフレンジを備え、ハイブランドなクラブやウェアを取り扱うショップの運営を始めたばかりで、そこがスタッフの募集をしているのを見つけて、色々考えて面白そうだなと思って応募してみた次第。

EVEN 2021年3月号

で、ネットでエントリーシートの受付を行っていたので応募したところ、すぐに面接の連絡が。
でもって面接当日は履歴書不要とのことだったので、筆記用具と身だしなみを整えて、面接を行うお店のスタッフがいる件のゴルフショップへと向かったのだけど、その後、希望が打ち砕かれる地獄のような時間を過ごす羽目になろうとは…

面接会場となる店に到着し、ゴルフ業界を渡り歩いてきたであろう思しき年配スタッフ(面接官)の案内で小部屋に招かれて、さっそく面接が始まる。
するといきなり履歴書を見せてくださいと言われ、え?!聞いてねぇぞ、と慌てる穴ぼこオヤジ。
一応、人事の担当者から履歴書は不要の旨を事前に聞いていたことを伝えると、履歴書も持ってこないで面接を受けに来るとは、やる気があるのか!っといきなり怒りだす面接官様。
いや、人事の人からは履歴書は必要ないと言われてるのだと何度も説明したものの、言われたことしか出来ないのか!とか、そんなことが通用すると思っているのか!と益々ヒートアップし、まさに取りつくしまもない状態。
その後も、一応、仕事の内容や必要なスキルを説明しながら、いくつか質問を投げかけてくるのだけど、それに対する穴ぼこオヤジの答えをことごとく否定しまくる面接官。
挙句、穴ぼこヤジのこれまでの仕事のキャリアはおろか性格にまでダメ出しをしはじめ、しまいには、あなたのような人は社会ではやっていけない、とまで言われる始末。

それこそ、当時はまだ「圧迫面接」なんて言葉が知られている時代ではなかったけど、まごうことなき圧迫面接そのもので、というかもはやパワハラモラハラの領域だったと思う。
それこそ、端から採用するつもりがないのなら、とっとと面接を終わらせてくれればよいものを、30分以上に渡って、いかに穴ぼこオヤジが社会に不適格なのか延々とダメ出しをし続け、呆れられ、そして穴ぼこオヤジの存在や人格を完全に否定し尽くして面接は終了。

今思い出しても、いやホント、地獄のような時間だった。
恐らく、人生最大の屈辱を覚え、意識が朦朧としたまま田園都市線に乗り、ワナワナ震える手で穴ぼこ嫁に泣きのメールしたところで、穴ぼこオヤジの記憶が途絶えている。

学生時代にゴルフスクールのアルバイト経験があって、一時はゴルフ関連で生計を立てようと思ってたこともあり、それまでの音楽の仕事や就職活動で疲れきってしまっていたので、一縷の望みを持って面接に臨んだつもりだったのだけど、門前払いどころか、まさかのフルボッコで、完全に叩きのめされてしまった。

今だったら、こんなパワハラ上司の下でなんかで働きたくもねぇので、こっちから面接を切り上げるだろうし、そもそも採用しないのなら、その瞬間に穴ぼこオヤジはお店のお客様になるはずなので、客に向かってその態度はなんだぁ!と逆切れすることだって出来るんだけどね。
もしくは、逆にお客様になるような人に対する面接の態度ではないので、むしろ逆手に取ってこれって採用ですよね!って迫るパターンとか?
いずれにしろ、そんな訳で、言うまでもなく面接の結果は不採用。
まぁ結論から言えば、そんなゴルフショップで働かなくて正解であったとは思うけど。

ただし、当時の穴ぼこオヤジは、それまでに色々な事が重なって既に傷だらけのローラ状態で臨んだ面接だったので、とどめを刺されたようなもんで、自分が思っている以上に心に深い傷を負ったのだった。
というのも、その日を境に耳鳴りに悩まされるようになり、対人に怯え、人間不信に陥り、自信や気力も完全に失い、やがては毎日死ぬことばかりを考えるようにまでなってしまったんだよね。
まさに、鬱病街道まっしぐらで、最終的には心療内科でお墨付きを頂き、薬を処方してもらうところまで行き着いたのだった。

まぁ今にして思えば、そもそもメンタルが弱っていた上に、音楽業界慣れでつぶしが効かない感じだったりで、面接官の気に障るところがあったのかもしれないけど、だからといって、かような面接官の態度が許されていい訳では無いんだけどね。

ということで、エイ出版の倒産で、真っ先に思い浮かんできたのが、この忌まわしい記憶だったという話。
心の奥底に閉まったままにしていたつもりだったのだけど、期せずして蘇ってしまった。

ちなみに、その後、二度と足を踏み入れることの無かった件のゴルフショップは既に無く、どうやら数年前に閉店してたらしい。
あと、エイ出版が抱えていた一部の雑誌は、既にいくつかの企業に譲渡を終えていて、今後も継続していくのだそうな。

そんな訳で、面接ってば、そもそも良い思い出になるようなことは滅多にないのだろうけど、エイ出版倒産の報を聞いて、複雑な思いが湧いてきちゃった。
まぁ人生経験にはなったけどね。

ところで、穴ぼこオヤジを全否定したあの面接官のスタッフは、今度は面接を受ける立場になってその後、再就職でもしたのだろうか?
ちょっと気になる。


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