穴ぼこ生活

穴ぼこの空いた数だけ書き記すお気楽ブログ。穴ぼこ人生ここに極まリ!

シン・ゴジラ

気付けば、何気にシリーズ化?しつつある夏の思い出を更新中の穴ぼこブログ(笑)
って、ただ単にリアルタイムで更新をしていないだけの話なんだけど、ただし、今回はあえて後回しにしたネタをおひとつ。

ネット界隈を中心に巷で話題となっている映画「シン・ゴジラ」。
実は公開して間もないお盆時期のレイトショーで観に行っておりました。
もちろん、庵野監督作品に興味を覚える内の一人というのもあるんだけど、これまたネットでも話題にされていた、いわゆる製作委員会方式ではなくて、東宝が全出資して作った映画であったことと、でもって、そんな社運を賭けた大作にも関わらず、なんと大胆にも端から口コミを狙ったプロモーション展開しか行っていない宣伝手法にいたく興味を覚え、余計なバイアスがかかる前に観に行った方が良いかもと思ってみた次第。
そもそも最近の邦画というと、テレビ局なんかが絡んでの製作委員会方式でもってリスクの分散を図る一方で、そのテレビ局を中心とした過剰なまでの露出でもって、話題作りを仕掛けては集客を狙うといった、いわゆる先行型マーケティングの手法が花盛りなんだけど、メディアスクラムを駆使して、あの手この手を使って観客を囲い込んでおきながら、肝心の作品の中身が伴っていないなんてケースがやたら多いように思えるんだけど...
要は煽るだけ煽ってチケットが売れさえすればミッションコンプリート!的な感じがしちゃって、資金の回収がお題目にならざるをえない資本映画ゆえの事情とはいえ、穴ぼこオヤジ的には端から食指が動きようもない話でしかなかったんだよね。
そんな映画の宣伝合戦が日夜繰り広げられている中、日本を代表する大手映画会社が、メディアへの一切の露出を制限し、あえて口コミしか狙わない宣伝手法のみで夏休みに映画を公開するってぇのは、もはや博打以外の何物でもないのと同時に、作品によほど自信があることへの裏返しとも見て取れる訳で、そうなってくると、さすがに捻くれ者の中年のオッサンでも、今回ばかりは食指が動かざるをえなかったんだよね(笑)

「シン・ゴジラ」大ヒットの要因、映画製作委員会の功罪

んな訳で、オフで家でゴロニャ〜していた穴ぼこ嫁のデカ尻を叩いて、再開発*1の煽り?で今やすっかり人影もまばらになった南町田にある東急系の109シネマで東宝系のゴジラ映画を観てまいりました...ってややこしや(笑)
ちなみに、ヤフーのネットニュースになるくらいの大開発を控える南町田なんだけど、開発前夜だからなのか、はたまたお盆時期だったからなのか、レイトショーで劇場に入ったら、穴ぼこ夫婦含めても、たったの十数人のお客しかいない有様(汗)
まぁ、お陰でスクリーンを独占しているような錯覚に陥りながら映画を観られたので良かったんだけどね。

で、肝心の「シン・ゴジラ」の感想はというと、一言、東宝の本気を見たという感じ。
東宝が抱える人気コンテンツとはいえ、前述の宣伝手法もさることながら、そもそも庵野秀明に監督をオファーを試みた時点で、相当リスキーな選択だったと思う訳で、これら全てが東宝のシナリオ通りに話が進んできたのだとしたら、あっぱれ!としかいいようがない。
で、見終わった後に真っ先に思い浮かんできたのは、もし宮崎駿が「シン・ゴジラ」を観たとしたら、果たしてどんな感想を口にするのだろうか?ということ。
この両者って、それこそ愛憎渦巻く師弟関係のようなところがあって、庵野監督って心のどこかでずっと宮崎駿を意識して映画(映像)を作ってきたような感じがするのだけど、今回の「シン・ゴジラ」によって、もうその必要は無いよと言ってあげたいくらい、映画監督として一皮剥けた印象を感じたんだよね。
例えば、宮崎駿が外の世界に広がっていくファンタジーを数多く描いてきたとすると、庵野秀明の場合は、逆に内面に向かっていく内なる世界のファンタジーを描いてきたように思うんだけど、それこそ両者のファン層なんかを見ても、方や老若男女に受け入れられ、方や特定のファンを刺激してきた、というように、明らかな差異が存在していた訳で、でもって、今回、庵野秀明ゴジラ映画という、いわゆる商業映画を職業監督として引き受けて撮ったことで、結果、その差異を軽々と埋めてしまったように感じたんだよね。
いや、もしかすると、宮崎駿を超えたと言ってしまっても過言ではないと思えるぐらいの出来だった。

そもそもゴジラって、それこそファンタジーにおけるダークヒーロー的な存在であったと思うのだけど、「シン・ゴジラ」で描かれていたゴジラは、東日本大震災で起きた福島の原発事故とまるでオーバーラップするかのような存在として描かれていて、当初はファンタジー映画を観ていたはずが、いつの間にやらドキュメンタリー映画を観ているかのような錯覚に襲われ、気付けばスクリーンの中の出来事に参加している自分がいたんだよね(笑)
それこそ、あの震災直後、福島第一原発が爆発を起こして、その様子を刻一刻と伝えるニュース映像を目にしながら、ひたすらネットで情報をかき集め、様々なモニタリングポストのデータを見ていた時に、はたと東京地方が大量の放射能に襲われつつあることに気付いてしまった、あの瞬間に感じた不安や恐怖は未だに忘れられないし、すぐさま、その事を両親や友人に話したものの中々信じてもらえず、でもって、東京から離れるべきか思い悩んだ末、諦めて家に留まることにしたんだけど、家中の隙間という隙間を目張りして、穴ぼこ夫婦で丸まって一番奥の部屋に閉じこもってたんだっけ。
で、その後、実際に東京が放射能に汚染されていたことが公けになった時は、自分の危機管理能力が正しかったことを証明出来た誇らしさと、恐らく被爆してたであろう虚しさを同時に感じたんだよなぁ。
そんな訳で「シン・ゴジラ」を観ながら、事態が一進一退で動いていくのに呼応するように右往左往する他なかった、あの時の焦燥感が蘇ってきて仕方がなかった(汗)

事実、映画関係者へのインタビュー記事*2にも、ニュース番組の場面だったり、あえてiPhoneで撮影した不安定な動画を使うなど、まさに震災で起きていたことを再現する演出を意図していたようなことを語っているんだよね。
まぁ、庵野監督十八番の鉄道系やミリタリー系のオタク心くすぐる演出だけでは世代や性別を超えるヒットに至ることはさすがに無かったと言える訳で、大ヒットの背景には、観客それぞれが抱えていたであろう、あの原発事故のトラウマを呼び覚まし、その解消に向かっていくが如く映画のストーリーが進行していくことで、スクリーンの中と観客の心の中とをシンクロさせるのに成功したことが大きな理由なのだと強く思ってみた次第。
まさに口コミを狙った宣伝手法がハマったのは、オタクから発信される口コミ効果があったからではなくて、「シン・ゴジラ」を見た誰もが、まるで身の回りで起きた出来事のように語り、考えを巡らせずにはいられない、時代性や社会性を帯びた映画だったからなんだよね。

https://www.toho.co.jp/movie/lineup_images/singozilla_sashikae2.jpg

もっとも、ゴジラ映画そのものが誕生し人気になった背景には、水爆実験で日本の漁船が被爆するなど、当時渦巻いていた核兵器放射能に対する恐怖や不安が世の中を覆っていたからであって、それらを象徴する存在として描かれていたのがゴジラだった訳で、その後、ゴジラ映画は娯楽色を強めていくことになるのだけど、今回、そんな流れを断ち切るように「シン・ゴジラ」はまさに原点回帰を狙ったことで、失いかけていたゴジラ映画の本質を呼び覚ましたことになるのだと思う。
でもそれって、裏を返せば、当時と同じように今の世の中が恐怖や不安に包まれているからこそ成立している話かもしれない訳で、映画の大ヒットを単純に喜べない現実社会があることも忘れちゃいかんよね。
まさに、本来のゴジラ映画の本領発揮って話ですな。

いずれにしても思ったのは、庵野監督は、自分の会社でもあるガイナックスで自由に映画を作るよりも、商業映画の職業監督として制約を受けながら映画を作った方が、面白い作品を撮るような気がする。
ただし「シン・ゴジラ」の終盤では、まさにその制約を受けたかのような強引な演出で突き進まざるを得なかった感もあって、正直、興醒めしたところも無くは無かったけど(苦笑)
あと、夏休み中の公開だったんで、親に連れてきてもらった子供達も多かったと思うけど、彼等にとっては、とんだ災難の映画でしかなかっただろうね。
怪獣映画に胸を躍らせて観にいったら、小難しいセリフがやたら飛び交う、大人達の会議を延々と見せ続けられている訳で、そらさぞかし退屈だったろうに(笑)
露出を控えた宣伝展開による唯一の被害者は、ゴジラ映画を楽しみしていた子供達だったかもしれないね。

ちなみに、その宣伝手法について、公開日まで一切情報が漏れないようあえて大規模な試写会をしなかったと言われている一方で、そもそも制作スケジュールが大幅に遅れたが故に、宣伝施策のプランニングはおろか試写会も出来なったという説もあるのだとか(笑)
まぁ、そんな裏話も含めて、穴ぼこオヤジがそうであるように、ついつい色々と語りたくなってしまう映画であることには間違いないね。
とはいえ、映画の宣伝に一役買うのは、なんか悔しかったので、ほとぼりが覚める頃合いを見て更新してみた次第。
って、どんだけ捻くれてんねんって話なんだけど(笑)
ところで、穴ぼこ旦那に無理くり観に連れてこられた穴ぼこ嫁はどうだったかと言うと...

ナニナニ、もう1回観たい?
って、旦那よりハマっとるやないか〜!!



*1:http://www.asahi.com/articles/ASJ9265M7J92UTIL04Y.html あの二子玉川ライズよりも大規模なんだとか...(汗)田園都市線の乗車率を500%ぐらいにでも目指してんのか?

*2:シン・ゴジラ」編集の舞台裏 カメラはバラバラ、画調も合わず……庵野総監督「それでいい」http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160905-00000035-zdn_n-sci