真夏の夜の出来事
夜、夫婦揃って買い物に出かけることになり、玄関で靴を履こうとしたその時
「ウギャ〜!」
エレベーターホールから嫁の絶叫がこだまして来た。
慌てて玄関を飛び出してみると
壁に激突しながら雄叫びを上げて飛び回る
の姿が。
そう、アシダカグモさん のお次はアブラゼミ君の登場です(笑)
でもって、まぁ、ほっといてもそのうち外に飛んでいくだろうと思った矢先。
ウィーン
とエレベーターが到着してドアの開く音
そして、あろうことか
「ジジジジ〜ッ!」
と叫びながら、我先に無人のエレベーターに乗り込むアブラゼミ君。
オイ!蝉が乗ってどうするっ!
と、ノリ突っ込みを入れたいところではあるのだけれど、さすがに、無人のエレベーターの中にアブラゼミというシチュエーションを見過ごす訳にもいかず、図らずも緊急対策本部を設置する羽目に。
とはいえ、それこそ夏休みの小学生ならば、喜んで素手で捕まえに行くところなんだろうけど、今やアリ一匹ですらうろたえるような、か弱きオッサンには身に余る責務。
はてさて、どうしたものか。
嫁の手前、とりあえずなんとかする振りだけでも見せなければ。
まったくノープランのまま、ひとまず玄関脇の納戸を覗いてみることに。
すると、なにやら虫かごにおあつらえ向きの小道具を発見!
パパパパッパパ〜ン
「味付け海苔〜!の入れ物〜!」
そう。
人間とは知恵と勇気がある生き物なんだよ。
そして、アブラゼミ君。
君の残り短い一生をエレベーターで終わらせるわけにはいかないのだよ。
とまぁ、エレベーターの壁にへばりつくセミの背後に、恐る恐る忍び寄る味付け海苔の入れ物を持った一人のオッサン。
そして...
パコッ!
おお!見事、捕獲成功!
そのまま蓋をしてすかさず外に連れ出します。
でもって、非常階段で蓋を外してアブラゼミ君を夜空に解き放つと
「もっと自由なところに飛んで行くんだよ」
と海苔オジサン
「アリガトウ、海苔お兄さん!」
とアブラゼミ君が言ったかどうかはわからないけど、見事にミッションを成し遂げて緊急対策本部はこれにて解散。
無事にひと仕事を終えてキラリと光る汗を拭う海苔オジサンに、ウットリした視線を送る嫁。
思わぬ展開で夫婦愛の高まりを見せて、アホアホ夫婦が晴れてエレベーターに乗り込みます。
って今、すぐ下の階でセミの鳴き声がしたような...