穴ぼこ生活

穴ぼこの空いた数だけ書き記すお気楽ブログ。穴ぼこ人生ここに極まリ!

おいらはドラマー

以前、話題*1にしたインターFMで放送されている「The Dave From Show」を聴いていたら、穴ぼこオヤジが勝手に和製ジェフ・ポーカロ*2とリスペクトしてやまないドラマーの沼澤尚(ぬまざわたかし)がゲストで出ていたんだけど、まさに番組史上、神回か?というくらいに音楽好きにはたまらない放送となっていた。
というのも、いつもの軽妙なトークとロックナンバーのリクエストなぞそっちのけで、放送ブース内にドラムセットを持ち込んで、沼澤さん自ら叩きながらドラマーの系譜やらテクニックやらを生解説してくれるという、ドラム好きにはなんとも贅沢でアカデミックな放送回になってたんだよね(笑)
ちなみに、7〜8年ぐらい前の安藤裕子のライブツアーで初めて沼澤尚のドラムを生で聴いたんだけど、日本人のドラマーでジェフ・ポーカロのようなドラムを叩く人がいるんだ!と驚愕したのを今でもよく覚えている。


ジェフ・ポーカロのドラムを一躍有名にした、ボズ・スキャグスのヒット曲「Lowdown」のライブ動画
今でこそ、馴染みのあるダンス系のリズムだけど、ジェフがこの世にもたらしてくれたリズムなんだよね


とまぁ、それもそのはずで、沼澤さんがドラムを最初に学んでいたのが、なんとアメリカにあるジェフ・ポーカロの実の父親、ジョー・ポーカロが講師を務めていた音楽学校だったんだよね。
即ち、ジェフ・ポーカロの弟弟子と言っても過言ではない訳で、ジェフのドラミングを継承している世界的な第一人者でもあるという話。
で、何が凄いって、大学を卒業してから渡米し、件の音楽学校に入学しているんだけど、そこで初めてドラムスティックを手にしたという遅いドラムデビューもさることながら、その僅か3年後には、チャカ・チャーンのツアードラマーを務めていたというんだから、こりゃまた、たまげた!
プロ野球選手だった父と国体バスケットボール選手だった母を持つことからも、アスリートとしての能力に恵まれていたことは想像に難くないんだけど、音楽的な素質はまた別物だけに、生まれ持っていたドラムの才能と両親から譲り受けた身体能力とが呼応して、短期間でドラマーとして突如、花が開いちゃったということなんだろうね。
それにしても、世の中には凄い人がいるもんだ。

で、番組では、当然、ジェフ・ポーカロに関するドラムプレイを披露しながら色々解説してくれてたんだけど、沼澤さんがジェフを評する話で大きく頷いてしまったのが、ジェフがドラムを叩くと、どんな曲でもコンテンポラリーなサウンドになるので、あらゆるジャンルのレコーディングで引っ張りだこになっていったのではないかとのこと。
TOTOとしての活動を始める以前の10代の頃から、既にスタジオミュージシャンとして数えきれないほどレコーディングに参加してきているジェフなんだけど、彼のドラムが加わるだけで、誰もが心地良くなるサウンドに変化する魔法をかけてしまうようなもんで、まさにジェフにとっての魔法の杖がドラムスッティックだったってことなんだろうね。
でもって、そんなジェフの名プレイの数々を事もなげに披露しながら解説する沼澤さんも、これまた凄かった(笑)
この瞬間、ジェフがまだ生きているかのように感じたのは、決して、穴ぼこオヤジだけじゃなかったと思うよ。

で、続いてとりあげたのがジェームス・ギャドソンというドラマーで、これまた、興味深い話とギャドソンのドラムテクニックを生演奏でもって披露してくれる沼澤さん。
ジェフ・ポーカロほど有名なドラマーではないんだけど、恐らく彼が叩いてる曲を耳にしたことが無い人など、この世には存在していないんじゃなかろうかというくらいアメリカの音楽史に多大な影響を及ぼしているドラマーの一人で、それこそ、この世に彼が存在していなかったら、音楽に「グルーヴ」も存在していなかったかもしれないと言っても過言ではないドラマーなんだよね。
モータウンサウンドを語る上で欠かせないドラマーというだけでなく、70歳を過ぎた今なお現役で、アメリカの音楽業界の最前線で活躍し続けているってのも凄過ぎる!(汗)
彼もまた、唯一無二のリズムを生み出すドラマーってことなんだろうね。

ちなみに、沼澤さんの実演解説で知ったんだけど、ドナルド・フェイゲンの名作アルバム「ナイトフライ」の1曲目「I.G.Y」でドラムを叩いていたのが、何を隠そうギャドソンだった(汗)
これまで、散々聴いてきた曲だったのに、そのことにまったく気づかなんだ。
道理で、あのハネたスネアが頭にこびりついて離れない訳だ(笑)
実は偶然にも?このアルバムにはジェフ・ポーカロも参加していて、てっきりジェフが叩いてるもんだと思い込んでたんだけど、あのグルーヴ感をもたらすために、あえてギャドソンを起用したということなんだろうね。
しかし、ジェフとギャドソンの二人のドラムが聴けるなんて、改めて思うに、なんと贅沢なアルバムなんだ!

グルーヴってなんだ?

ギャドソン本人は自分がやっていることのすごさがまるでわかってないというか、全く意識なく、すごいことをふつうにやってるわけで。
だから、どうやってるのって訊かれても、説明できないんです。
たとえば、ギャドソンからまず何よりも先に手振り付きで「One is this big」といわれたんですけど、どういうことか、わかります?

簡単にいうと、4/4拍子でも、6/8拍子でも、1打目にくる音の「位置」っていうのは、大きな幅として存在するってことをわかってプレイしろよってことだと、ぼくは理解しています。
こんなふうに、ギャドソンが話す言葉は、彼が感じている生のままの言葉なので、単にそのまま翻訳をしても、その意味がとてもわかりづらいんですよ。


これ、3年程前にジェームス・ギャドソンが来日してドラムのワークショップセミナーを開く際に、サポート役を引き受けた沼澤さんに「ほぼ日」が行ったインタビューの一部なんだけど、二人の関係性含めて、実に興味深い話が語られていて、こちらも読み応えがあって面白かった。
しかし、なんでまた「ほぼ日」が沼澤さんをインタビューしてるんだろう?(笑)
相変わらずお目が高いねぇ。

そんな訳で、車の中でエアドラムをしながら、カーラジオに聴きかじりっ放しの穴ぼこオヤジ(笑)
でもって、沼澤さんがドラムだけでなくて、話も分かりやすくて達者なので、名ドラマーの貴重な裏話やらドラムの実演解説やらが途切れることなく続いて、放送時間を延長してくれよ!と思ってしまうくらい、楽しい「The Dave From Show」の放送回でした(笑)

思うに、IT革命やデジタル技術の進化によって、音楽がより身近にそしてリーズナブルに接する機会が増えていくことは決して悪いことではないし、時代の流れとして受け入れていくものなんだろうけど、ただその一方で、それによって音楽そのものの価値が安価な物になりかねないリスクが同居しているのもまた事実。
例えば、ドラム一つ取っても、デジタル技術の発達によって、コンピューターソフトやデジタル機器で生ドラムのような完成度の高いリズムトラックが作れるようになったりで、それこそスタジオミュージシャンの仕事がどんどんデジタル技術に置き換えられている時代でもあるんだよね。
そんな時代の中で、70過ぎのおじいちゃんドラマーが紡ぐグルーヴが未だに求められるという意義は、決して小さくないのだと思う。
つまりは、それって、デジタル技術では成しえない価値があることを意味している訳で、それこそが、音楽が持つ魅力のような気がしてならないのだけどなぁ。

な〜んてことを考えながらユーチューブを見ていたら、穴ぼこオヤジの音楽観を全否定するような動画を見つけてしまった(汗)

“Compressorhead”というドイツ生まれのロボットメタルバンドなんだそうな(笑)
それこそ、AI(人口知能)の技術が進化を遂げると、ジェフやギャドソンにしか生み出せなかったグルーヴも再現できるようになってしまうということ?
そういやぁ、既に作曲や作詞を自動生成するアプリケーションソフトやヴォーカロイドソフトなんかはあるし、技術的には、もはや人間の手を介することなく音楽を作って、演奏することが可能なレベルまで来ているんだよなぁ(汗)
となると、もはや人間は音楽を聞くだけってこと?
果たして、音楽のデジタル化の行き着く先は、一体、何処へとなるのだろうか?

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*1:穴ぼこ生活 The Radio Star Killed TV http://d.hatena.ne.jp/divot/20160312/p1

*2:ジェフについて書いた穴ぼこ過去ログ 時代はサンプリングする? http://d.hatena.ne.jp/divot/20151212/p1