穴ぼこ生活

穴ぼこの空いた数だけ書き記すお気楽ブログ。穴ぼこ人生ここに極まリ!

自戒を込めて

新型コロナ関連のエントリーを書き始めた時から、ずっとおかしいと思い続けているのが、感染の有無を調べるPCR検査数の異様な少なさだ。
朝のワイドショー番組で他局を圧倒しているテレビ朝日のモーニングショーを中心に、医療者や専門家らが検査数の少なさを連日、問題視したことで今や国民の多くが関心を寄せる話題となり、政府も動かざるをえない状況に追い込まれているのが今日までの流れとなっている。

www3.nhk.or.jp

そもそも3月8日に加藤厚労大臣が検査のキャパシティを1日7000件レベルに引き上げると公言したにも関わらず、その後も1日1500件程度と低い検査数が続き、それから1ヶ月経っても一向に検査数が増える様子が見られなかったことから、安倍首相自ら検査数を増やすように指示を出したくらいだ。

「東京都を含め、全相談件数に占める検査実施の報告件数が低い都道府県については、背景や事情を改めてフォローアップする」
 安倍晋三首相は2日の衆院本会議でこう述べ、都道府県で検査の必要性が適切に判断されているかどうか調べる考えを示した。

PCR検査の拡充鈍い日本 ニーズ急増、医療態勢維持しつつ強化急ぐ - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト

さすがに最近では5,000件程度まで行われるようになってはきたけれど、それでも韓国や欧米と比較すると、圧倒的に少ない現状に変わりはないんだよね。

巷では、感染者数を矮小化したい政府の思惑が働いているからだとする言説が飛び交い、穴ぼこオヤジもかような見方を肯定的に捉えていたのだけど、ただし、そういった疑念を政府も払拭しようとアピールに努めているにも関わらず、検査数の少なさは相変わらず徹底している異常事態となっている。

www.jiji.com

そこへもってきて、保健所の所長が意図的に検査を抑制していると認めたニュースだ。
恐らく、この報道に接した多くの人々が憤りを感じたことだろう。
ご多分に漏れず、穴ぼこオヤジもふざけるな!と勢いブログを更新しそうになったんだけど、う~ん、でもちょっと待てよ?
なぜ世論や政権の意向に逆らうようにしてまで検査数を抑え込まないといけないのか。
もしかすると、もっと根本的な原因があるように思えて仕方がなくなったんだよね。
で、色々調べてみたところ、様々な要因が浮かんでくる中、大事なポイントで穴ぼこオヤジに大きな認識不足があったことに気付いてみた。
むしろ見方を間違えていたのは穴ぼこオヤジの方だったのかも。

思うに、PCR検査のキャパシティを増やしてきているにも関わらず、検査数が低調であることの理由を考えるとするならば、そこになんらかの意図が働いているケースと働いていないケースの二通りがあると思われるのだけど、まず意図していないケースとして考えられるのは、リソースの不足、即ち人員が足りていない可能性だ。
これは穴ぼこブログでも最初に取り上げた、国会での共産党の田村議員の指摘にも通じるのだけど、国立感染研究所や地方財政の予算削減によって保健所の人員の削減が図られ、最近の報道でもクローズアップされているように、保健所の人手が足りず、要は検査数を増やしたくても増やせない状況なのではないかということだ。

一方で、保健所の所長が認めたように、検査数を抑制する明確な意図も明らかにもなっている訳で、もちろん人手不足の影響もあるにせよ、根本的には医療崩壊を来したくない思惑が強く働いているものと思われる。
要は、検査を増やしてしまうと、それに比例して感染者が大量に発覚する可能性が高くなってしまうので、検査に高いハードルを課して検査数を抑制することで感染者を減らし、病床を確保する狙いがあったのではないかということだ。
ただし、仮にそうだとするならば、実際、東京都が対応を開始したように、軽症者を病院以外の隔離施設に移すなどして感染者のトリアージを行えば病床の確保はできるようになるので、医療崩壊を招かない流れさえ構築できれば、積極的に検査を行うことができると思えたのだが、どうやら、事はそう簡単な話ではないらしい。
というのも、万能でないのは理解していたつもりだったけど、新型コロナのPCR検査には、実は大きなジレンマを抱えていたんだよね。

news.yahoo.co.jp

早い時期に一部の医療関係者や専門家からは上記リンク先のようなPCR検査の盲点を具体的に指摘する声があったのに全く見落としていた。
要は、一口にPCR検査と言っても100%の精度を誇る検査ではないので、実は1回の検査で4通りの判定が起こりえる可能性があって、感染者を陽性とする正しい判定と、陰性とする誤判定(偽陰性)、更に非感染者を陰性とする正しい判定と、陽性とする誤判定(偽陽性)の計4通りのケースが存在するんだよね。
例えば、感染者100人のグループと非感染者100人のグループとでPCR検査を行った場合、それぞれのグループの検査結果における精度(陽性的中率)には大きな違いが生まれてしまう特性があり、検査の対象者に非感染者が多く含まれれば含まれるほど、比例して検査の精度が低下してしまうという傾向が生じ、ついては、コロナに感染していない可能性が高い患者を対象にしたPCR検査を行うと、偽陽性偽陰性の確率がむしろ高まってしまうという悩ましい問題を抱えているんだよね。
つまり、検査の精度管理を高めるためには、感染の疑いが濃厚な患者を対象にして行う必要があり、検査に辿り着くまでの高いハードルを設けることで、保健所では検査対象者の絞り込みを行なっていたと考えられるのだ。
更に面倒なのは、PCR検査の感度が低いからといって、同一の患者に複数回検査を実施したところで、さほど誤差を埋める効果は期待できないということも。

従って、PCR検査の対象者を広げるということは、非感染者の比率を高めることに繋がってしまい、結果的には、検査で誤った判定を受ける患者をより増やしてしまうことになり、陰性の誤判定を受けた感染者が普通に生活をし、陽性の誤判定を受けたコロナに感染していない人達が貴重な病床を埋めてしまうという、逆の効果も生んでしまうんだよね。

ということで、あたしゃてっきり、重症化しそうな感染者だけを治療対象とするための偏った検査基準だとばかり思ってたんだけど、実は検査の精度を落とさないために設けた検査基準という側面もあった訳で、どうやら大きな思い違いをしていたようだ。
そんな訳で、検査の拡大には慎重な姿勢が求められ、軽々しく検査の拡大を口にするメディアや医療者、専門家及び政治家の言動を注意深く見ていく必要があるとの思いに至っている次第。

少なくとも、検査の拡大によるかような弊害がPCR検査には含まれていることを、多くの人が理解しているとは到底思えず、PCR検査に対する認識不足が放置されているのが現状だとするならば、政府もメディア、医療者、専門家も、もっと正確に伝える必要があると思うのだけど、なぜなされないのかは謎だ。
ただし、医療者や専門家の一部ではPCR検査の特性を訴えてはいるのだけど、中には検査の拡大を主張しているテレ朝モーニングショーや、岡田教授、上医師らを叩く、批判のための批判で唱えている人もいたりして、正直なんだかなぁという感じも。
特にそういった批判をする連中に限って、検査の拡大を、希望者全員の検査の話にすり替えてたりしていて、余計に始末が悪かったりするんだよね。

minerva-clinic.or.jp

いずれにせよ、PCR検査の精度にだけフォーカスを当てるのであれば、検査のハードルを高くする保健所の対応は正しいのかもしれないけど、その反面、軽症者や自覚症状の無い数多の感染者の存在を見過ごすこととなり、彼らが市民生活を行えば市中感染のリスクを引き上げるのも当然の話で、感染防止の観点からすると、致命的な欠陥を抱えているのが、現在の検査の方針と言わざるをえない。
まさに保健所だけの論理で考える、木を見てばかりで森を見ることのできない、上意下達による硬直化した組織の実像が透けて見えるようだ。

冒頭の貼付記事にもあったように、どうやら安倍政権は、ドライブスルー方式のPCR検査の導入を考えているようだけど、国際的な圧力や世論を気にして、単純に検査数を増やせば良いと短絡的に考えて行うのであれば、逆に感染者を街に溢れさせ、無駄に病床を埋めてしまう、一斉休校措置やアベノマスク以上の愚策となる危険性が高い。

まず国が真っ先にやらないといけないのは、PCR検査に対する国民の理解を深める努力と、検査基準を引き下げるのと引き換えに、他の検査(CT、抗体)を組み合わせた検査方法の確率など、検査の拡大と精度を担保する上で、その運用や体制の最適化を図ることだ。
更にそれらに並行して、無症状及び軽症な感染者への対応も徹底するなど、全ての感染者の捕捉と対策を講じる必要があるのだけど、果たして今の安倍政権にできるのだろうか。

それこそ、緊急事態宣言がコロナ対策を兼務する元通産官僚の西村康稔経済再生担当大臣によって経産省寄りに骨抜きにされ、一方で財務省の圧力思しき、どケチ振りが伺える緊急経済対策など、厚労省が行うPCR検査しかり、各省庁の綱引きと思惑だけが先行し、本来の感染症対策からは程遠い、一貫性を失った愚策だけが繰り出されることになってしまっていて、もはや新型コロナウイルス感染症対策本部が機能しなくなっているのが現状だ。
であるならば、安倍首相がリーダーシップを発揮してまとめていく他ないのだけど、その覚悟も能力も無い上に国民の信頼までも失っているのだから、もはや救いようがないよね。
自らを正当化する以外に危機と対峙する術を持ち合わせていない政権だけに、今後も国民不在の中途半端な愚策を連発していくことになるのだろう。

未知の新型ウィルスに接して思うのは、凄まじいスピードで刻一刻と状況は変化しており、評価や認識が180度変わることも決して珍しくはないことから、批判的な視点の矛先を外に向けるだけではなく、自分自身にも向けておく必要があるよなぁと、自戒も込めて深く感じ入る穴ぼこオヤジなのでした。

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